今日の社説

2017/02/27 01:07

「簡易宿所」の増加 無許可の存在が気掛かり

 金沢市内で「簡易宿所」が増えている。ゲストハウスやカプセルホテルなどとして営業する簡易宿所は、1泊3千円程度の料金設定で外国人や若者の支持を得ているという。北陸新幹線の開業直後は、23施設が市の許可を得て営業していたが、現在は3倍近い66施設に増えた。

 簡易宿所は個人住宅の部屋を貸し出す「民泊」のほかに、空き家やビルの空き室を利用して開業する事例が多くなっている。大がかりな投資がいらないため、副業として参入する企業も出てきた。

 昨年、石川県内で創業融資の件数を伸ばした日本政策金融公庫では、簡易宿所の開業を対象とする融資が目立ったという。地域経済に活力を出す動きとしても注目できる傾向である。

 ただし、それも地域の秩序を保つことが前提である。住民の平穏な生活を脅かす事業は城下町には似合わない。金沢市内で既に開業した施設では近隣住民の意見を聴いてトラブルを避ける動きもみられるが、気掛かりなのは無許可で営業する施設の存在である。

 金沢市によると、昨年11月末時点でインターネットの仲介サイトに掲載されていた市内の物件のうち、126室は営業許可のない施設とみられる。その中には金沢市が許可の取得を指導している施設もあるが、住所も分からない施設も多いという。

 無許可の施設では安全や衛生状態の管理が行き届いているのだろうか。住民にとっては生活環境の悪化やトラブル発生が心配になる実態である。金沢市内では住民の不安を受けて、町会などが市と結ぶまちづくり協定で簡易宿所の開業制限や管理人の常駐を求める動きが出ている。

 来月には、住宅を利用する「民泊」の営業基準を定めた新法案を政府が国会に提出する予定である。新法では騒音防止や標識掲示などの義務規定と罰則を設ける一方で、営業を届け出制とする方向になっている。

 訪日外国人の増加を成長戦略に位置付けて規制を緩和するのであれば、政府は現場で指導に当たる自治体を支援し、地域の平穏を保つ取り組みの実効性を上げなければならない。

県産コシヒカリ 新品種後押しする評価を

 日本穀物検定協会(東京)が発表した2016年産米の食味ランキングで、石川県産、富山県産のコシヒカリが、ともに5段階評価で上から2番目の「A」に格付けされた。15年産が最高評価の「特A」にランクされた石川は2年ぶりの転落、14年産、15年産と「特A」が続いた富山は3年ぶりの転落である。

 両県では折しも、独自に開発した水稲品種の市場投入を控えている。新品種のデビューを目前にして、主力銘柄のコシヒカリの評価が下がったのは残念というほかはない。新品種のブランド化を進めていくうえで、産地のイメージは大事である。新品種のデビューを後押しするためにも、17年産コシヒカリの「特A」復活を果たしてもらいたい。

 食味ランキングは、産地・品種ごとに全国の141銘柄を、見た目や味、粘りなどの6項目で評価する。16年産の「特A」は計44銘柄で、15年産の46銘柄に次いで過去2番目に多かったという。北陸三県でも福井が「特A」を維持しているだけに、「特A」からの転落は石川、富山の関係者にとって少なからずショックだったろう。

 コメの食味は日照時間や気温などの気象条件に左右される側面はあるが、土づくりや生育管理、栽培技術といった農家の取り組みが大きく関わってくる。農業団体や研究機関は16年産米が「特A」を逃した原因を詳しく分析して農家を指導し、一丸となって17年産米の品質向上を図ってほしい。

 石川の新しい水稲品種「石川65号」は、9年の開発期間を経て今年秋に市場へ参入する。富山も来年秋から新品種「富山86号」の本格販売を目指している。ともに試食会で高い評価を得ており、3月には名称も決まる予定である。

 新品種がそれぞれの県を代表するブランド米に育つことを期待したいが、栽培面積を増やしていくには年数がかかるだろう。当面はコシヒカリを主力銘柄に据えながら、新品種の生産量を増やし、評価を確立していかねばならない。コシヒカリの「特A」定着で優良米産地のイメージを高め、新品種のブランド化につなげたい。