今日の社説

2018/05/25 01:17

県の6月補正予算 地域浮揚へ確実に成果を

 石川県の6月補正予算案は中小企業を支える施策が目立つ内容となった。谷本正憲知事が7期目に初めて固めた予算で中小支援を柱に据えたのは、3月の知事選の遊説で切実な声に接したからでもあるのだろう。

 北陸の景気は回復から拡大の段階に入っているという。その勢いは、ようやく中小企業にも及んできたが、今度は人手不足が深刻になっている。こうしたときに県が地元の企業を支える必要性は高く、中小支援を予算の柱に据えるのは適切な対応である。

 デフレ脱却を目指す安倍政権の政策で求人倍率は上がり、賃上げが続いている。中小企業にとっては人手不足と人件費上昇で厳しい局面だろうが、ここを耐えれば飛躍が待っている。努力する地元企業を支えるために、県は施策の中身と運用を工夫し、地域浮揚に向けて確実に成果を出してほしい。

 人手不足対策では、中小企業がAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を生かせるように指導する。生産性を上げたくても、手段と方法に戸惑う企業は少なくない。石川の企業が技術革新の節目で遅れを取らないように後押しするのは時宜にかなう。

 中小企業の前向きな活動を支える施策では400億円の基金を設ける。これまでの300億円基金を拡充し、機械、繊維業の製品開発も支援対象に加える。年間3億円強の運用益を活用する施策が中小の業績を向上させ、地域経済にも波及効果を出すことを期待したい。

 県が力を注がなければならない課題は他にも多い。補正予算案に用地の取得費が計上された新県立図書館は、文化の厚みがある石川にふさわしい「知の拠点」となるように仕上げる必要がある。

 金沢城公園の整備では、二の丸御殿の調査検討費が盛り込まれた。加賀藩の中枢を担った御殿が復元されると、文化立県の象徴となる。実現に向けて調査と検討を進める意味は大きい。

 新幹線の開業で活気が広がった県内では今も効果が続く。他の地域より恵まれた環境を生かして、さらなる成長につなげるのは県の重要な役割である。今が正念場と認識して施策を執行してほしい。

イラク日報調査 本質的な問題はなお残る

 防衛省は、陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報問題に関する調査結果を公表し、関係者17人を処分した。存在しないとされた日報がその後見つかり、自衛隊の隠蔽(いんぺい)体質と批判された問題にようやく区切りをつけたことになるが、日報に関する本質的な問題は残されたままである。自衛隊の日報を一般の行政文書と同列に扱うことが妥当かどうかなど、引き続き議論すべき「宿題」が国会に課せられたといえる。

 イラク日報問題が表面化したのは2017年2月で、野党議員の資料要求に防衛省は「不存在」と回答し、当時の稲田朋美防衛相は国会で「日報は見つけることはできなかった」と答弁した。稲田氏は国会答弁の後、「本当にないのか」と統合幕僚監部に尋ねたが、当時の陸自研究本部(元・教育訓練研究本部)の最初の回答は「存在しない」だった。

 その後、研究本部が日報を確認しながら報告せず、今年4月になって小野寺五典防衛相が日報の存在を公表した。こうした経緯に関して、調査結果は、組織内の情報共有の不足が原因で、組織的な隠蔽はなかったと結論づけたが、稲田氏の探索指示が組織内に徹底されず、ぞんざいな対応で済ませてきたことは、指揮命令系統を機能させることが最重要の自衛隊にとって由々しい事態である。

 小野寺防衛相は自衛隊の日報にについて、活動状況を知る「貴重な一次資料」と規定するが、イラク派遣部隊の日報は公文書管理法上、「保存期間1年未満」の文書とされ、管理がルーズであったことも問題の背景にあろう。

 自衛隊を事実上の軍隊とみなせば、日報は「戦闘速報」に位置づけられ、軍事的な教訓や「戦史」の資料となる。行動を共にする外国軍隊の軍事情報も含む日報は、秘匿すべき高度な軍事機密とは言えないまでも、保存と公表は慎重に行わなければならない文書である。自衛隊は行政組織とされ、日報も公文書管理法の適用対象に含まれるが、軍事的な性質上、一般の行政文書と区別すべきではないかという主張にも一理あり、国会の検討課題である。